2024年11月の代表メッセージ

11月の代表メッセージ

☆2024年11月09日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]

◇ 代表メッセージ ◇
■□ 2023年度「いじめ認知件数」が公表 □■

11月7日、富士山がようやく初冠雪を迎えました。
130年前に統計を取り始めてから最も遅い観測で、
平年より1か月余り遅れての初冠雪だと報道されていました。
テレビニュースの画面にも美しい富士の姿が映し出され、
日本らしさに少し感動を覚えました。

さて、昨年は10月4日に公表された「いじめ認知件数」が
今年はやや遅れて、10月31日に公表されました。
10月31日、文科省は、
2023年度(令和5年度)の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」を
公表しました。
以下にポイントを整理いたします。
——-
【いじめ認知件数】
1. 小、中、高校、特別支援学校でのいじめの認知件数が過去最高の73万2,568件、
(前年度比5万620件増)。
2. いじめを認知した学校数は30,213 校(前年度29,842 校)、
全学校数に占める割合は83.6%(前年度82.1%)。
3. いじめの現在の状況として「解消しているもの」の割合は77.5%(前年度77.1%)。
4. いじめの発見のきっかけは、
・「アンケート調査など学校の取組により発見」が50.3%(前年度51.4%)と最も多い。
・「本人からの訴え」は19.4%(前年度19.2%)。
・「当該児童生徒(本人)の保護者からの訴え」は12.8%(前年度11.8%)。
・「学級担任が発見」は9.2%(前年度9.6%)。
5. いじめられた児童生徒の相談の状況は,「学級担任に相談」が81.9%(前年度82.2%)と最も多い。
6. いじめの態様のうちパソコンや携帯電話等を使ったいじめは24,678 件(前年度23,920件)、
総認知件数に占める割合は3.4%(前年度3.5%)。
7. 「いじめの重大事態」の件数も過去最高の1,306件(同387件増)。

【長期欠席】
1. 小・中学校における長期欠席者数(注1)は49万3,440人(前年度46万0,648人)、
高等学校における長期欠席者数は10万4,814人(前年度12万2,771人)。
2. 小・中学校における不登校児童生徒数は34万6,482人(前年度29万9,048人)であり、
前年度から4万7,434人(15.9%)増加し、過去最多。
——-

今回の結果を見ると、ネットいじめは増加はしたものの比率的には落ち着いているようにも見え、
報道でも大きく取り上げられてはいないようです。

文科省としては、
——
いじめ認知件数の増加の理由として、
1. いじめ防止対策推進法におけるいじめの定義の理解が広がった
2. いじめの積極的な認知に対する理解が広がった
3. アンケートや教育相談の充実などによる児童生徒に対する見取りの精緻化、
SNS等のネット上のいじめの積極的な認知が進んだこと
などが考えられるとしています。

また、「いじめの重大事態」の発生の増加については、
1. いじめ防止対策推進法の理解が進んだことによる重大事態の積極的な認定。
2. 保護者の意向を尊重した対応がなされるようになった。
3. 学校としていじめの兆候を見逃しなど早期発見・早期対応への課題がある。
4. 個々の教員が一人で抱え込んでしまうなどの組織的な対応への課題がある。
5. 重大事態1,306件のうち、490件(37.5%)、(前年度356件、38.7%)は、
重大事態として把握する以前にはいじめとして認知されていなかった
—–
との分析を示しています。

どうしても気になるのは、【いじめ認知件数】2にあげた、
いじめを認知した学校数は83.6%(前年度82.1%)という数字です。
昨年よりはいじめがあった学校が1.5%増加したことにはなりますが、
5,943校、16.4%、言い換えると20校に3校はいじめが確認できなかったということです。
実際、文科省の言うところの
「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」というカテゴリーで考えれば、
いじめが起きない学校があるのでしょうか。
カテゴリー分けそのものの問題はあるようにも思いますが、とりあえずおいておくとしてですが。
各自治体、あるいは学校ごとに、まだ「いじめ」の基準が曖昧な点が多いのではないかと思います。
毎年毎年、主張していることですが、このカテゴリーを含めて考えると、
いじめ認知件数は、「100万件」を超えてこそ、実態に即した件数になるのだと思います。
ただ、新潟市の1000人あたりのいじめ認知件数の221.6件を参考に考えると200万件程度が、
実際のいじめ認知件数かもしれません。

昨年、「不登校30万人時代の到来」ということを述べましたが、
今回の49万人を超える長期欠席者、34万人を超えた不登校(注2)の数値について文科省は、
—–
1. 児童生徒の休養の必要性を明示した
「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)」の
趣旨の浸透等。(注3)
2. コロナ禍の影響による登校意欲の低下、
特別な配慮を必要とする児童生徒に対する早期からの適切な指導や必要な支援に課題があった。
3. 不登校の理由として
・小・中学校においては、「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった。」(32.2%)
・「不安・抑うつの相談があった。」(23.1%)
・「生活リズムの不調に関する相談があった。」(23.0%)
・「学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた。」(15.2%)
・「いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があった。」(13.3%)の順で多かった。
—–
と推測しています。

不登校数は、2020年度に24万4,940人と大きく20万人を超え、
2023年で34万6,482人と、たった3年で10万人以上も増えてしまいました。
このままですと「50万」という、信じられないような数字を考えておかなくてはならないかもしれません。
「教育機会確保法」に実効性を持たさなければ、
学力不足の子どもたちが増え続けることになりかねません。

今日、紹介した数字は、今年度、2024年の数字ではありません。
現在ただいまの状況がどうなっているのか心配です。
しかし、私たちのところに届くいじめ相談を見ていると、
学校の先生方も、いじめの早期発見・早期解決に取り組んでくださっているように感じております。
なかには、隠蔽したり、放置したりする例もあることはありますが、
全体的には、「いじめは起きているが、教師がいじめを解決している」と考えて良いと思います。

保護者の皆様も、いじめに気がついたらすぐに学校にご相談いただきたいと思います。
相談の仕方がよくわからない、あるいはどのように話を持って行けば良いのかなど
ご心配のこともあると思います。
私たちは、傷ついている子どもたち、そして保護者の皆様のお力になりたいと考えています。
どうぞ、ご遠慮なく、ご相談いただきたいと存じます。

(注1)この調査での「長期欠席者」とは、「欠席日数」及び「出席停止・忌引き等の日数」の合計日数により、年度間に30日以上登校しなかった児童生徒。(不登校を含む)。
登校しない理由は、「病気」、「経済的理由」、「新型コロナウイルスの感染回避」、「不登校」、「その他」。
「その他」の具体例は、保護者の登校についての無理解、家族の介護、外国での長期滞在、連絡先不明等。

(注2)この調査での「不登校」とは、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは
社会的要因・背景により、登校しない、あるいは登校したくともできない状況にある長期欠席の児童生徒。
(ただし、「病気」や「経済的理由」を除く)

(注3)
※教育機会確保法
不登校の子どもの数が増え続けるなか、さまざまな理由で学校に通うことができない子どもたちの
教育を受ける機会を確保するための法律、
「義務教育の段階における普通教育に相当する機会の確保等に関する法律」(教育機会確保法)が、
2016年に成立しました。
同法の5つの理念
(1) すべての子どもが安心して教育を受けられる学校環境の確保
(2) 不登校の子どもそれぞれの状況に応じた支援
(3) 不登校の子どもが安心して十分に教育を受けられる学校環境の整備
(4) 年齢・国籍を問わず能力に応じた教育の確保
(5) 国・地方公共団体・民間団体などの密接な連携

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明

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